個人事業主か法人か!それぞれのメリット・デメリットで比較
事業を展開する場合、個人事業主と法人ではどちらを選んだら良いのでしょうか?法人とは、会社や財団など法律上人と同じ権利能力を与えられた経営主体のことを指します。
どちらも人を雇って利益追求活動をすることができますが、税制面や設立手続きなどの面で大きな違いがあります。
個人事業主と法人には、それぞれどんなメリットやデメリットがあるのか説明しましょう。
個人事業主のメリット
個人事業主は税制面や登録手続きの点で、法人にはない様々なメリットがあります。
個人事業主のメリットを紹介しましょう。
手続きが楽でお金がかからない
個人事業主になるためには、行政機関への届け出手続きが必要ですが、その方法は所定の形式に従って開業届を出すだけなので非常に簡単です。
開業届には、起業者の氏名と事業所の住所のほか、事業の内容を記すだけでほぼ十分です。
資本金の準備も要りません。
開業届を出せば、書類に不備のない限り個人事業主として認められるので、すぐに事業を開始できます。
事業所得があってもなくても年度末に確定申告をしなければならないものの、赤字の繰越を3年間行うことが認められています。
個人事業主が確定申告する際には、白色申告と青色申告の2つから選ぶことができます。
控除額が大きい青色申告は、複式簿記という素人には難しい記帳をしなければなりませんが、安価な市販のソフトやネット上の確定申告サポートシステムを利用すれば、難しい作業をする必要はありません。
また、青色申告会等に加入しない場合には、確定申告の際に費用がかからないので、経済的負担が少ないことも特徴と言えるでしょう。
一定の所得までだと税金がお得
個人事業主は、所得税と住民税のほか消費税や個人事業税の納税義務を負います。
法人ではないので当然法人税はかかりません。
法人税は所得税より累進性が高いため、ある程度以上の高所得でない限り個人事業主の支払う所得税の方が法人税より安いと言えます。
所得税の課税対象は事業収入ですが、配偶者控除や扶養控除などがされるうえ、車両費や接待交際費などの経費を差し引くことができます。
したがって、一般のサラリーマンよりも所得税額をおさえることができると言えるでしょう。
また、一定額以上の所得があれば住民税を支払う義務が生じますが、均等割はおよそ5千円で所得割は所得の1割とされています。
そして、消費税については、開業から2年間は納税義務がなく、3年目以降も売上が1千万円以下であれば支払う必要がありません。
その他の場合には、顧客から受け取った消費税のうち個人事業主が払った消費税分を差し引いて消費税を納めることになります。
それから、個人事業税という地方税は、年間事業所得が290万円を超える場合にかかります。
業種により税率が異なるものの、大半の業種で4パーセントです。
法人のメリット
次に法人のメリットについて説明しましょう。
経済活動を活性化するため、法人は個人事業主より優遇される様々な制度があります。
税率が低いため一定の所得以上だとお得
法人が納める税には、法人税を始め法人住民税や法人事業税があり、さらに地方法人特別税に加えて消費税と固定資産税などがあります。
これに加えて、場合によっては利子や配当金に課税される所得税や自動車関連税も支払わなければなりません。
このように、法人の納める税金の種類は個人事業主より多いのですが、法人税の税率は個人事業主より優遇されており、最高でも24パーセントと低率になっています。
法人税は所得税のように税率が細分化されておらず、ほとんど一律と言えるため、事業規模が大きいほど法人にはメリットがあると言えるでしょう。
また、所得が330万円を超えれば、法人税の方が個人事業主が納める所得税より安くなります。
ただし、課税対象所得が800万から900万円の場合は、個人事業主の所得税の方が法人税より税率が低くなるので注意しましょう。
社会的な信用が大きい
一般的に、法人は個人事業主より社会的信用が大きいと言えるでしょう。
社会的信用とは、対外的イメージと実務面の2つの側面があります。
定款や代表者を定め登記手続きなど正規の法的手続きを踏んで設立された法人は、取引の際に相手が安心感を抱くことができるでしょう。
特に会社は取引上社会的信用度が高いと言えます。
実務面では、法人としか取引しないと定めている企業もあるほどです。
取引をめぐって複数の受注希望者が競合した場合には、個人事業主より法人の方が有利になることも少なくありません。
給与所得控除を活用できる
個人事業主の所得は事業収入そのものであり、経費として差し引くことができません。
しかし、法人では事業者の所得を役員報酬として経費に計上することが可能です。
これは、給与所得控除と呼ばれ課税対象となる所得を減らすことができるのです。
もちろん、個人事業主もこのような控除がありますが、青色申告控除でも最高額は65万円までとされています。
経費として認められる範囲が広い
個人事業主の経費は家事との区別が難しく、家事按分により限定する必要があります。
しかしながら、法人の場合は家事と重なる部分が無いので、広範囲にわたって経費が認められます。
個人事業主に経費として認められる項目に加えて、給料や保険料のほか住宅費や日当も経費として計上できます。
法人の方が、自宅兼事務所の賃料・固定資産税や自動車関連費ばかりでなく、生命保険料や退職金も経費として計上できるメリットがあるのです。
生命保険料については、個人事業主が上限の定められた生命保険料控除しか認められないのに対し、法人であれば役員の生命保険料を経費として計上できます。
それから、法人は役員居住用の社宅を法人名義で借りて、家賃の一部を法人の経費として落とすことが認められています。
さらに、法人の従業員が出張などをすれば日当を支払うことがありますが、日当も経費とすることが可能です。
個人事業主は、出張の際にかかる旅費や宿泊費を経費にすることができても、日当を経費として計上することができません。
法人は、従業員だけでなく役員の出張でも日当を支払うことができます。
また、日当は法人の経費として認められるのに、受け取る従業員や役員には所得税が課せられない珍しい費用と言えるでしょう。
退職金をつくることができる
法人では、一定の上限があるものの、経費の負担で退職金を準備することができます。
退職金は給料とは別枠の人件費として経費に計上できるため、課税対象額を減額することが可能なのです。
大幅な黒字経営の法人は、退職金を用意することで節税対策ができるでしょう。
退職金を受け取る役員も、給与とは別の計算式で所得税を課されるので、かなり税負担が軽減されるメリットもあります。
役員報酬とは別に役員の退職金を経費として落とせることは、法人の大きなメリットと言えるでしょう。
社会保険に加入できる
法人であれば、全国健康保険協会などの健康保険に加入できます。
また、厚生年金保険にも加入して国民年金の上乗せが可能になります。
そして、業務中や通勤中に災害に遭った従業員を救うための労災保険にも加入できます。
それから、失業手当を受給できる雇用保険にも入れます。
さらに、40歳以上になれば介護保険にも加入しなければなりません。
社会保険の加入費用は、法人の経費として計上することができることになっています。
ただし、個人事業主の場合でも、従業員が5人以上であれば、社会保険を経費として落とすことは可能です。
決算日を自由に決められる
個人事業主は確定申告の制度により事業年度は1月から12月と定められていますが、法人にはこうした規定が無く設立から1年以内なら自由に決算日を決められます。
経営判断により、最も決算事務に取り組みやすい時期を決算日として選べるのです。
いったん設定した決算日も、所定の手続きを取れば変更することもでき、固定化されるわけではありません。
法人が行う事業によって繁忙期や閑散期のシーズンが異なるので、繁忙期と決算時期が重なって同時期に事業運営と決算事務の両方に忙殺されないよう工夫されているのです。
個人事業主のデメリット
先述した通り、個人事業主は法人より社会的信用が低く、事業資金やマイホーム購入などの資金繰りの場面で、銀行等の金融機関からなかなかお金を貸してもらえないといったデメリットもあります。
また、個人事業主は厚生年金保険などの社会保険に入れないため、老後の生活に不安を抱えることもあるでしょう。
さらに、法人と比べて経費として認められる範囲が狭く、課税所得の控除面で不利となることも否定できません。
家族経営の事業の場合、個人事業主は配偶者や子ども等に払う給与について、青色申告の承認を受けたうえで事前に税務署に届け出ることが必要です。
法人の場合は、家族に払う給与の届け出は必要ありません。
法人のデメリット
法人は様々な面で個人事業主より優遇されているものの、デメリットもあります。
法人のデメリットについて説明しましょう。
会社の設立に時間・手間・お金がかかる
会社設立には、事業の目的や内容を記した定款を作成し、法務局へ出向いて登記手続きを行わなければなりません。
定款には様々な記載事項が定められており、一般社団法人や株式会社などの種類と商号を決めて記載します。
商号は何でも良いわけではなく、既に同じ名前が登記されていないか法務局でチェックする必要があります。
定款には所在地や発起人の氏名に加えて、取締役・監査役・執行役などの有無を記載し、資本金額や会社の事業年度も載せます。
さらに、会社の印鑑を作成し、登録しなければなりません。
取引銀行の口座を作る際にもこの印鑑を使用することが望ましいでしょう。
そのほかにも役員報酬や発行株式数を決めなければなりません。
株式会社を設立する場合、21万円から25万円ほどの費用がかかります。
その内訳は、まず定款用収入印紙代としての4万円と定款の認証の際に証人に支払う手数料の5万円があります。
ただし、電子定款なら収入印紙を購入する必要がありません。
さらに、定款の謄本手数料として、1ページ当たり250円の料金が発生し、合計額として平均2000円ほど支払わなければなりません。
そして、登録免許税として15万円または資本金額の0.7パーセントのうち高い方を徴収されます。
合同会社の設立の場合には、定款の認証が不要です。
したがって、設立費用に定款の謄本手数料は含まれず、定款用収入印紙代4万円と登記免許料6万円または資本金額の0.7パーセントのうち高い方を支払います。
合同会社の場合も電子定款なら収入印紙は購入する必要がありません。
そこで、合同会社の設立費用は、合計で6万円から10万円程度となります。
社会保険が重荷になる
先述した通り、法人を設立して従業員を雇う場合、従業員を健康保険や厚生年金保険を始め労災保険や雇用保険などの社会保険へ加入させなければなりません。
非常勤職員を雇う場合にも、労災保険への加入が義務付けられています。
社会保険料は経費として計上できるとはいえ、従業員と法人とで折半するので法人には重荷となるでしょう。
赤字でも法人住民税がかかる
法人に納税義務のある法人住民税は、法人税制と均等割りの2種類から成り立っています。
法人税制は、会社の利益に応じて課せられる法人税の額によって増減しますが、均等割りは資本金と従業員の数により左右されます。
したがって、法人住民税は法人の得た利益とは無関係に課されるのです。
そこで、法人住民税は事業が赤字経営でも納めなければなりません。
法人住民税は住民税より割高なので、赤字経営の法人は負担が小さくないでしょう。
法人は所得が低いと税制の優遇措置の恩恵を受けられず、個人事業主より税負担が重くなることもあるのです。
事務作業の負担が増加する
法人は、設立時の登記申請だけでなく、事業開始後も複式簿記が必須となって決算書の作成など事務処理作業が欠かせません。
また、行政機関へ提出する書類が増加して事務作業が増えます。
法人税の税金申告も手続きが複雑で、税理士や公認会計士に委託しない場合は法人に少なからぬ負担がかかるでしょう。
税理士や公認会計士に委託すると、規模の大きい法人の依頼費用が個人事業主より高くなるケースが少なくありません。
それから、社会保険や労働保険もいったん加入すればその後の手続きが不要なわけではなく、頻繁に書面の提出を求められます。
さらに、株式会社の場合は、一定期間おきに役員の改選を行わなければならず、株主総会の開催や取締役変更登記などの事務手続きもこなさなければなりません。
法人はメリットも多いが負荷も重い
法人化すると、社会的信用が増して税制面の優遇措置も受けられ、大きなメリットがあると言えるでしょう。
しかし、設立や運営の事務作業が煩雑で、運営面での経済的負担も小さくありません。
小規模の経営であれば、個人事業主の方が有利な場合もあります。
そこで、事業規模と運営資金を考慮して、個人事業主と法人のどちらにするかを決めることが重要です。
法人化すると、社会的信用が増して税制面の優遇措置も受けられ、大きなメリットがあると言えるでしょう。
しかし、設立や運営の事務作業が煩雑で、運営面での経済的負担も小さくありません。
小規模の経営であれば、個人事業主の方が有利な場合もあります。
そこで、事業規模と運営資金を考慮して、個人事業主と法人のどちらにするかを決めることが重要です。